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【在宅緩和ケア】①-2 がんの父と娘 【リハビリしてくれない!】

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続きを書きます.

通ったり入院したりしていた病院から,訪問診療医を探すように言われた娘さん.

いろいろ検索したら,わたしのところにたどり着いたそうです.

でも.
歌舞伎町?しかも,歌舞伎町の女王??ってびっくりしたそうです.(笑)

いや~.わたしも,歌舞伎町の女王って出してあるので
まさかそれでも連絡してもらえると思わなかった!(笑)
経口摂取があまりできないと伺って,割とすぐにお邪魔しました.

まずは信頼関係の構築からです.
いきなり他人が入り込んでくるわけですから.

わたしのところは,よそのクリニックのように往診車に往診車であると表示していません.
デパートの外商って,どこの車かさっぱりわからないキタナイ(失礼!)ワゴン車で来るんですよね.
絶対外商の車だとわかりません.
わかると嫌じゃないですか?
それと同じで,病気の人のところに行っているわけなので.
わざわざうちのクリニックの連絡先などがわかるような車で行かないようにしています.
だって,すくなくとも病人がいることがわかるではないですか?
それに.車で走って宣伝ってなんかお下品かなと思って.

*この文面から,意外とわたしはお上品かもしれなくて,そのわりにうちの業界の幹部たちや白い巨塔のおじさん(教授ともいう)たちに向かって,このくそじじい!!!とか叫んでおりますが.このわたしのかなり大きい許容範囲を相当逸脱しているじじいどもが多すぎてこうなっているということを,みなさまには是非ご理解いただければ幸甚でございます(笑)
わたしの診療のコンセプトは,【外商クオリティー】を提供することです.医師は分類ではサービス業です.
そうすると,最高のサービスを提供する.
おいしいものを食べて育つと味覚が敏感になり,おいしい料理をするのと同じで
最高のサービスを受けてすごすと,最高のサービスを提供することが当たり前で,職人気質にそこにこだわる.
しかし,医師が提供するのはサービスとはいっても科学的根拠に裏付けられた医療技術なわけですから
医師は職人なんだとわたしは思っています.

わたしって田舎にいるとき何でもかんでも某デパート外商にお願いしてやっていただいてたんですよね.
あ!!!
こういうと,くそ田舎高知県ではデパートが一つしかないため
どこのデパートなのかバレバレですが(笑)

くそ田舎は顧客が少ないため,おそらく外商のハードルが大変低いため
わたしのような者でも外商の顧客になるというからくりです.

なので,最高のおもてなしを受けてたということ.

すると,自分が提供する側になっても最高のサービスをと思うのが自然でしょう.
なので.
いやらしくクリニックの名前の入った車には乗っていかないし
白衣も着ません!!
患者さんたちは,毎日わたしが何を着てくるのか楽しみにしています????
で,わたしが行くとにこにこ笑顔になって,手を握ってくれる.

そんなことで生きがいを感じて元気になってくれるのだったら,いいじゃないですか?
もちろん,治療は専門医クオリティーでしっかりする.
それがわたしの考えです.

ま.この患者さんのお嬢様は大変洗練されたお方なのですが
歌舞伎町??大丈夫かしら???と思いつつお電話をくださったのですが
難なく合格いたしまして,お父様の主治医となりました(*///∇///*)

補液を最初の数日は毎日,は前回書きましたが.
動けなくなってからそんなに時間が経過していなかったので
ケアマネージャーを通じてリハビリをお願いしました.

ケアマネは,医師の指示に逆らいはしませんが,どうやら怪訝に思っていたようです.
お嬢様が前に,リハビリとかしてほしいといったらしいのですが,実現せず.

あとで,ケアマネからは大変反省する言葉をいただきました.
どうせ死ぬんだから,こんな状態の利用者さんにリハビリって意味ないのかと思ってました.」とのこと.

あら?認識を改めていただきたいわ.
だって,死ぬということはそれまで生きるということなのです.
だから,それまで最高のサービスを提供し,目の前の対象の笑顔を増やすのがわたしたちの仕事です.
ちゃんとリハビリすると,部屋の中を2往復くらいできるようにすぐなりました.

少し動けるようになったら,患者さんは娘さんに向かって突然
トイレに行きたいと言いました.
父娘で10メートル以内のところを片道20分かけてよろよろしながら行ったそうです.
それを聞いて,すかさず「室内用車いすでリクライニングタイプを導入しましょう」と言いました.

そして,車いすが来て,やっとリビングのテーブルを囲めるようになりました!!
感無量です.
そしたら,歌ってくれたんですよ~.患者さんが!!!
(*///∇///*)

年を越せない,と言われていた患者さんは,すっかり笑顔で年越ししました.
今年のお正月は,このお宅でおせち料理を頂きました!
わたしとお嬢さんは年齢も近く,わたしはうちの旦那様の愚痴などをきいていただいています(笑)

そういえば.血液内科医だったとき.
造血幹細胞移植する患者さんは,入院期間が長くなりますから
やっぱりこうやっていろんなおしゃべりして過ごしました.
やっぱ,夫に対する文句!!しかも,このときは,夫婦でこの患者さんの担当医だったんですよね~.
わたしって昔からこういう(変な!)医師だったんですね.(笑)

1月も終わりですよね.
初夏にお孫さんの結婚式を控えています.

わたしの夢は,患者さんの車いすを押して結婚式に参加することです!!

そういったら,すっかり招待客リストに入れてくださっているようです.

素敵でしょ?

ご自宅に行くということ,そしてがん患者さんたちを看取るということは
その時期は特に家族の一員のように過ごします.
不安な思いをなるだけ解消するようつとめるからです.

そして患者さんがなくなっても,その後のブリーフケアなどを通じて
ずっとかかわっていく.

それがわたしの作りたい医師患者関係です.

患者としてではなく,人として尊重する.

個人主義の国,ベルギーで思春期という多感な人格形成期を一部過ごしました.
一人一人を尊重して大切にする文化.

医師としてのわたしの基礎を支えています.