【 例題1-② 】行為能力・意思能力;認知症患者の胃ろう抜去を家族が要請

2015-12-31 

みなさま,こんばんは.
続きです.

前の中身については
https://minerva-clinic.jp/%E3%80%90%E3%80%80%E4%BE%8B%E9%A1%8C%EF%BC%91%EF%BC%8D%E2%91%A0%E3%80%80%E3%80%91%E8%AA%8D%E7%9F%A5%E7%97%87%E6%82%A3%E8%80%85%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%AE%E8%83%83%E3%82%8D%E3%81%86%E3%82%92%E6%8A%9C/

こちらを見てくださいね!

①本人が法的に有効な意思決定ができない.⇒有効な意思決定とは何か?
②本人の事前指示(有効な意思決定が出来なくなったとき,こんな場合はこうしてほしいと予め作成しておく書類)がない
③配偶者が本人の意思を正しく代弁しているかどうかが,確認できない.
④配偶者が法定代理人ではない場合(殆どはこれにあたるでしょう),代理権が認められるのはどの範囲か.
⑤PEG造設の際の同意書は有効か.
⑥経口摂取できないためにPEG増設したのに,抜去すると低栄養状態となり,生命予後に悪影響があるのではないか.

など.論点がありましたね.

それでは,今日は,①の有効な意思決定とは?について考えてみたいと思います.

医療現場の話ですから,当該医療行為を受ける受けないという,「診療契約」を結ぶ能力がなければなりません.
以下は,わたしが理解している範囲で書きますが,間違っていたら是非,遠慮なくご指摘ください!


つまり,法律学的には,契約という法律行為の一種を単独で確定的になしていただかなければならないと言うことで,「行為能力」が必要になります.

行為能力を理解する前に,意思能力という言葉も理解しないといけません.

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%84%8F%E6%80%9D%E8%83%BD%E5%8A%9B%E3%83%BB%E8%A1%8C%E7%82%BA%E8%83%BD%E5%8A%9B
このサイトを参考にします.

意思能力とは,有効に意思表示をする能力のことをいいます.
具体的には自己の行為の結果を弁識するに足りる精神的な能力のことです.

意思能力は行為能力とは異なり実定法上に具体化されているものではありません.
意思能力の存在は、私的自治の原則(意思自治の原則)を基本として構成される私法上の法律関係においては
当然の前提とされます.
民法その他の法令に,「有効な行為を為すためには意思能力が必要である」という旨の定めはありません.
しかし、私的自治の原則の前提から意思能力を欠く人(意思無能力者)の法律行為は無効とされるのです(判例として大判明治38年5月11日民録11輯706頁)。

意思能力の有無は、問題となる意思表示や法律行為ごとに個別に判断されます.
必要とされる判断能力の程度は民法第7条「事理を弁識する能力」(事理弁識能力)に相当するものと理解されています。
一般的には、10歳未満の幼児泥酔者、重い精神病認知症にある者には、意思能力がないとされる。

行為能力とは,単独で有効に法律行為をなし得る地位または資格のことをいいます.
行為能力が制限される者のことを制限行為能力者といいます.
制限行為能力者は民法に定められており具体的には未成年者,成年被後見人,被保佐人,同意権付与の審判(民法17条第1項の審判)を受けた被補助人を指す(民法20条第1項).なお,同意権付与の審判を受けず代理権付与の審判(民法876条の9)のみを受けている被補助人は制限行為能力者ではない(民法20条第1項定義参照).

行為能力の制度は法律行為時の判断能力が不十分であると考えられる者を保護するために設けられたものです.
意思能力のない者による法律行為は無効とされるのですが,
法律行為の当事者が事後において行為時に意思能力が欠如していたことを証明することは容易ではありません.
また,行為時の意思無能力が証明された場合には法律行為が無効となるので,その法律行為が無効となることを予期しなかった相手方にとっては不利益が大きいのです.
そこで,民法は意思能力の有無が法律行為ごとに個別に判断されることから生じる不都合を回避し,類型的にみて法律行為における判断能力が十分ではない者を保護するため,これらの者が単独で有効に法律行為をなし得る能力(行為能力)を制限して制限行為能力者とし,その原因や程度により未成年者,成年被後見人,被保佐人,被補助人に類型化した上で,それぞれの判断能力に応じて画一的な基準により法律行為の効果を判断できるようにしたのである.そして,制限行為能力者にそれぞれ保護者を付して取消権などの権限を認め,制限行為能力者の利益となるよう適切に判断することが期待されている.保護者は具体的には,未成年者の場合には親権者又は未成年後見人,成年被後見人の場合には成年後見人,被保佐人の場合には保佐人,被補助人の場合には補助人である.

意思能力のない者による法律行為は無効とされるのに対し,未成年者,被保佐人,同意権付与の審判を受けた被補助人が,それぞれの保護者(法定代理人,保佐人,補助人)の同意を得ずにした一定の法律行為は取り消すことができるものとされ,また,成年被後見人の行為は,その保護者(成年後見人)の同意があった場合であっても取り消すことができるのが原則である.

意思能力のところに出てきましたが,認知症では意思能力はないとされる,のですが
いきなり,昨日まで意思能力があって,今日から全くない,という風な臨床経過をたどるわけではないでしょう.
子供が大人になって,順番に事理弁識能力,意思能力,行為能力を獲得していくのとは
逆のことが時間を経過して起っていくのです.
しかも,波があります.

例えば,わたしの患者さんでも,わたしを認識できる時とそうでない時があります.

それでは,どの段階で意思能力がない,と見做されるのか?

認知症の意思能力の判例をいくつか見てみましょう.

京都地判平成 25 年 4 月 11 日
意思表示が、どの程度の精神 能力がある者によってされなければならないかは、当然のことながら、画一的 に決めることはできず、意思表示の内容によって異ならざるを得ない(意思能 力の相対性)。単純な権利変動しかもたらさない意思表示の場合(日常の買い物 など)、小学校高学年程度の精神能力がある者が行えば有効であろうが、複雑あ るいは重大な権利変動をもたらす意思表示の場合、当該意思表示がもたらす利 害得失を理解するのにもう少し高度な精神能力が要求されるから、小学校高学 年程度の精神能力しかない者が行った場合、意思能力の欠如を理由に意思表示 が無効とされることが多いものと思われる。

初期認知症の状 況の者については、一律に意思能力・遺言能力が否定されるわけではないものと考えられる。遺言がもたらす結果が単純なものである場合、それほどの精神能力までは必要とされないであろうから、そのような遺言との関係では、初期認知症の状態にある者の遺言能力は直 ちに否定されないものと思われる.

東京地判平成 23 年 12 月 12 日
遺言能力は財産管理能力と異なり、自己の死後に財産 を誰に取得させるかという比較的単純な事項を理解できる程度の能力で足りる
知的能力には意識消失の有無等によって変動がある

う~ん...ますます判らなくなってきましたね...

ですが,医療行為というのは,基本的には生命に直結する影響を及ぼすものですし,今回はPEGの造設という,おなかに穴をあける侵襲的行為なわけですから,相当軽度な初期の認知症のお方以外は,本人の同意では難しい,と言えるのではないでしょうか?

 

 

 

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